最終選抜会

日本初の宇宙ビジネスアイデアコンテスト「S-Booster 2017最終選抜会」が、10月30日(月)に六本木ニコファーレにて行われた。

応募開始から約1ヶ月かけた募集期間に300件を超える応募があった。応募者としては、企業に所属する社会人だけではなく、学生や主婦など様々な人から応募があった。その中から、事前の書類選抜、1次選抜で選ばれたファイナリスト15組。このファイナリストたちが3分という短いプレゼン時間を使って各々の提案を会場に、そしてネットを通じて会場の外に伝え、大賞獲得を競った。
開会から閉会までのすべてがニコニコ生放送でネット配信され、当日は13,000人以上もの視聴者がその様子を見守った。通常の宇宙関連のイベントと比べたらその人数は桁違いだ。また、会場に集まったメディアは40社以上。非常に注目度の高いイベントとなった。

<ゲスト審査員>
審査員長 村上憲郎氏(元Google日本法人名誉会長、株式会社村上憲郎事務所代表取締役)
特別審査員 夏野剛氏(慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科 特別招聘教授)
特別審査員 山崎直子氏(宇宙飛行士)
審査員 津田佳明氏(ANAホールディングス株式会社)
審査員 渋田純一氏(三井物産株式会社)
審査員 梶田直揮氏(株式会社大林組)
審査員 小川正人氏(スカパーJSAT株式会社)
審査員 松浦直人氏(宇宙航空研究開発機構JAXA)

主催者挨拶

主催者挨拶を行う内閣府宇宙開発戦略推進事務局 髙田修三局長

S-Booster 2017実行委員長である内閣府宇宙開発戦略推進事務局 髙田修三局長から主催者挨拶が行われた。髙田局長はS-Boosterとこれからの宇宙ビジネスへ期待を寄せた。

髙田「約1か月という短い応募期間だったにもかかわらず、300件を超える素晴らしいビジネスアイデアの提案があった。しかし、アイデアだけでは、事業化にはつながらない。S-Boosterでは、事前選抜を勝ち抜いた15組の提案に対して、メンターとよばれる事業化支援のスペシャリストが3ヶ月にわたりメンタリングを行い、ブラッシュアップを行いました。本日この会場には投資家の方々もいらっしゃいます。このイベントがきっかけとなり、一つでも多くの提案が事業化につながっていくことを期待しています」

これから登壇する最終選抜者へ応援メッセージが送られた後、ついに最終プレゼンが開始された。

最終選抜は3分間のプレゼン

最終プレゼンでは緊張の場面も見られたが、審査員からの質疑応答やニコニコ生放送のコメントが流れる際に笑いに包まれるなど、明るくポジティブな雰囲気で進められた。

プレゼン時間は3分、すべてを伝えきるために

3分という時間は、プレゼンには非常に短い。S-Boosterでは、実現性・収益性・革新性・発展性が評価される。その3分で、着想のヒント、ビジネスモデル、今後の事業計画をまとめる。この短さで投資家へ伝わるプレゼンにするためには、提案そのものの明確さに加え、資料構成、高度なプレゼンスキルが必要だ。

メンタリング・合宿を通じて、投資家に刺さる提案へブラッシュアップ

提案の精度を高めるため、事前選抜会直後から当日に至るまでの3か月間、各チームともに「メンター」とよばれる新規事業創造のプロによる指導があった。メンターは、市場分析や需要予測、将来のキャッシュフロー見込み、資金調達、資本政策など様々な観点から、提案者と一緒になって事業計画を詰めていった。時には、打ち合わせが深夜に及ぶことや、休日にスカイプを使って議論を行うこともあった。3か月間の濃密なメンタリング期間を経て、15組の「ビジネスアイデア」は、ベンチャーキャピタル(VC)の目を引くほどの魅力的な「事業計画」へとブラシュアップされていった。

ニコニコ生放送のコメントで行う、視聴者とのコミュニケーション

当日はファイナリスト15組の発表の様子がニコニコ生放送で配信された。360度LEDの電気装飾で覆われた会場の壁面には視聴者からのリアルタイムのコメントが映し出された。「がんばれー」や「今すぐにでも事業化しそう」など、発表者への応援コメントが飛び交った。中には、厳しいコメントもあったりと、緊張感のある最終選抜会だった。政府主催のイベントではあまり見られない斬新なものだった。

審査員による質疑応答

2分の質疑応答の時間が設けられており、さまざまな質疑が行われる。短く限られた質疑のやりとりの中にも、各ファイナリストと審査員の真剣さがうかがえ、会場には緊張感が走る。

15組それぞれが、実現したい未来を賭けたプレゼンテーションとなった。

華やかなトークショー

審査時間に行われたトークショーでも豪華な顔ぶれが並んだ。トークの司会進行は、S-Boosterのメンターの一人でもある、石田氏。ビジネスのプロ、宇宙飛行士、気鋭の宇宙ベンチャー企業創業者、女優。その顔ぶれだけを見ても「宇宙」がさまざまな人を魅了することがうかがえる。

左から
司会進行 石田真康(A.T.カーニー株式会社)
スペシャルゲスト  剛力彩芽(女優)
ゲスト  高橋進 (株式会社日本総合研究所)
ゲスト  若田光一(JAXA宇宙飛行士)
ゲスト  山田雅彦(ウミトロン株式会社)
ゲスト  岡島礼奈(株式会社ALE)

司会進行の石田氏が、ゲストに質問を行う形で進めた。

----高橋さん、なぜ宇宙ビジネスが盛り上がりを見せているのでしょうか

高橋「宇宙は地上のIoT、ビッグデータ、AIと組み合わさることで、より解決できる課題が広がるものです。宇宙ビジネスはベンチャー企業が興すものと言われることもあるが、大企業の社内事業でもいいと思います。スモール・オープン・コラボレショーン、これは宇宙ビジネスに限らず、起業する力として大切なこと。宇宙ビジネスはまさに日本経済活性化を担うものです」

----実際に起業したお二人は現在の宇宙ビジネスの盛り上がりをどう感じていますか

山田「IT企業の宇宙利用が活発になっていると思います。小型衛星が非常に注目されていますが、これからはさらに頻度、精度など、利用しやすい形でのデータ取得が必要になります」

岡島「私が起業したときよりも、宇宙ビジネスで起業する機運が高まっていると思います。これから起業する人たちにはたくさんのチャンスがあると思うのでぜひチャレンジしてほしい」

----若田さんがこれから期待する宇宙ビジネスはありますか

若田「400km以下の地球低軌道でのビジネスですね。水や空気の再生技術など、これから実証しなくてはいけないものはたくさんあります。いまの技術をスピンオフする形で考えてもいいと思います。国際宇宙ステーションISSのきぼうモジュールでは、小型衛星の放出を行うことができます。そういった施設をぜひ使ってほしい」

-----一方で宇宙ビジネスを行う際に、課題と感じる部分はありますか?

岡島「宇宙ビジネスは他ビジネスよりも初期投資がかかる場合が多いです。事業としてはシーズのフェーズにもかかわらず、大きな費用が必要になることもあるので資金面についてはやはり課題になりますね」

山田「衛星データ利用側の課題は、主要衛星打ち上げの計画に頼ってビジネス計画を立ててしまうところですね。利用サイドがもっと利用しやすい衛星データがあるとありがたいです。プロトコルなどの統合を期待しています」

若田「その点、アメリカでは新規ビジネスが参入しやすいような法整備を行っています。法的な部分から、参入障壁を低くしているのです。いまできる工夫のひとつとしては、宇宙機関が既に持っているアセットを利用することなどですね。JAXAでは知財データの活用など、より宇宙を使いやすくする支援なども行っているので利用してみてください」

----剛力さんの、宇宙ビジネスの印象は?

剛力「とても楽しそうだと思いました。私は宇宙ビジネスについて、今はあまりわからないのですが、だからこそ出てくるアイデアもあると思います。これからも勉強していきたいですね」

S-Booster2017大賞決定

賞の発表には非常に多くの関係者が詰めかけた。トークショーで華やかだった雰囲気は一変、ざわめきの中に緊張がみなぎる。

「審査は非常に僅差でした」
審査員長の村上憲郎氏は発表前にそう述べた。それほどどのチームが受賞してもおかしくないほど、15組のプレゼンテーションは高度なものだった。

まずは、審査員特別賞、次に、スポンサー賞が発表された。賞が発表されるごとに、会場からざわめきが起こり、大きな拍手が送られた。ニコニコ生放送のコメントにも応援メッセージが流れる。

残すは大賞だ。ファイナリストチームはここに向けて提案をブラッシュアップしてきた。その結果がついに発表される。

「超低高度衛星搭載ドップラーライダーによる飛行経路・高度最適化システム構築」

発表された瞬間、提案者である松本紋子氏が息を飲むのがわかった。緊張の面持ちのまま、髙田修三局長から賞状を渡された後、ようやく笑顔を見せた。受賞理由は、実現性、革新性だ。科学技術根拠があり、世界的展開も可能なことも高く評価された。

左から、髙田修三局長、松本紋子氏、剛力彩芽氏、山崎直子氏

最後に松山大臣がS-Booster 2017の受賞者へ祝辞を伝えた。

松山「宇宙を利用すればここまでできるのかというのを改めて宇宙利用の可能性や期待の大きさを感じました。それぞれの提案が事業化に向けた「ブースター」すならち「起爆剤」となり、次のステップにつながっていくことを大いに期待しています。JAXAや日本政策投資銀行(DBJ)などの関係機関とも連携しつつ、引き続き、様々な形でスタートアップから事業化まで支援していきたい。」

スポンサー各社、メンターの方々、トークショー登壇者への感謝を伝えるとともに、次年度以降の抱負も述べ閉会の挨拶とした。

松山「S-Boosterの取組を来年度以降も継続したい。特に、来年度からは、準天頂衛星「みちびき」4基体制によるセンチメートル級の測位サービスが開始されます。来年度のS-Boosterでは、これまでにない革新的なビジネスアイデアが出てくることを大変楽しみにしています」

大賞を受賞した松本紋子氏と、松山政司内閣府宇宙担当大臣

左から、髙田修三局長、若田光一氏、剛力彩芽氏、松本紋子氏、松山政司内閣府宇宙担当大臣、村上憲郎氏、山崎直子氏

広がる宇宙ビジネス

当日は多くの立ち見客で会場がいっぱいになるなど、宇宙ビジネスは高い注目を集める分野となった。最終選抜会で出たアイデアはどれも革新的で実現性の高いものだった。松山大臣が述べたように、これから事業化へ向けての動きが加速する。投資なども必要になるフェーズだ。トークショーでも「宇宙ビジネスの起業の機運が高まっている」という言葉が出ていた。このS-Boosterをきっかけに、宇宙ビジネスはますます広がるに違いない。そして、S-Booster発のベンチャー企業が世界で活躍する将来はそう遠くない、そう感じた。

受賞者一覧

厳正なる審査の結果、大賞1件、スポンサー賞4件、特別審査員特別賞2件が選出されました。

大賞 「超低高度衛星搭載ドップラーライダーによる飛行経路・高度最適化システム構築」
松本 紋子
スポンサー賞 ANA(エーエヌエー)ホールディングス賞
「嗅ぎ注射器 宇宙へ」
石北 直之
三井物産賞
「衛星測位×セキュリティ(未来に向けた安心な測位)」
羅針盤
大林組賞
「宇宙テザー技術を使った宇宙環境計測技術の開発」
TRY FORCE
スカパーJSAT(ジェイサット)賞
「超低高度衛星搭載ドップラーライダーによる飛行経路・高度最適化システム構築」
松本 紋子
審査員特別賞 「世界をつなぐ さざ波衛星ネットワーク」
さざ波
「力触覚技術を適用したロボットアームによる宇宙での作業の高機能化」
ハプティクスターズ

これらの提案に関するお問い合わせは、以下のメールアドレスよりご連絡ください。
S-Booster2017@jspacesystems.or.jp